ホーム | 更新履歴 | サイトマップ | 検索 | about us | Contact | English

3. 満足な自転車放浪生活

善光寺教授院ユースホステル

自転車での旅というのは、やがて決まった生活パターンを作りやすい。コンビニはだいたい一定区間に一つは見つかるし、朝食、トイレ、昼食、おやつにたまには夕食までの必要なものはすべて揃う。おにぎりと缶コーヒーの朝食はコンビニ側の郵便ポストがちょうど良いテーブルの高さでもある。

コンビニの店員が、笑顔と「いらっしゃいませー」の声で迎え入れてくれるのもいつも嬉しかった。

寝床にはユースホステル、ビジネスホテル、自転車ターミナルなどの高級施設を利用する事もあったし、時にはキャンプもした。時々公園でキャンプを張ったが、幸い注意を受けることもなかった。夜遅くに到着し、夜明けと共に出発しさえすれば問題ないようであった。時々は駅で寝たし、一度はプラットフォームで寝たこともあった。

長旅に耐える保温性と速乾性に優れた品物を丁寧に選んだおかげで最低限の洋服と用具しか持っていなくても十分だった。一日が終わりには寝床、コンビニと温泉を探した。自転車生活に最低限必要な物だけでなく、快適さをも見つけることを心がけていた。

4日に1日は休みをとることにすると、佐多岬までは69日かかると計算された。一日の平均走行距離は70Kmだった。

出発してから14日後に宗谷岬から777キロ離れた函館に着いた。クレジットカードで現金を引き出そうとしたものの、銀行のATMが受け付けてくれず、銀行員もお手上げだった。これには本当に参ったが、やっとのことで郵便局のATMならVISAを取り扱えるということが分かり、それからは郵便局の看板が翌日から10週間現金が使えるという目印になった。

ある時、ボトムブラケットが緩んでいるのが発覚したが、固く締めるには高度な自転車メンテのスキルが必要ということが分かった。たくさんの小さな自転車ショップを訪ねたが、店の年配経営者達は私のマウンテンバイクをまるでロケットであるかのように眺めるだけに終わってしまっていた。

私の愛車、ジャイアントはアメリカでデザインされ、台湾で組み立てられたものだ。しかし、シマノのパーツは日本発のものではなかっただろうか?だとすればもっと簡単に修理ショップが見つかっても良いものだが…。

そうこうしているうちに、たまたま小さな郊外の自転車ショップ、「めいほう商会」という店を紹介された。最初にお店を見た時、相当期待できそうなポスターが!ランス・アームストロングがモデルのツール・ド・フランス、トレックやジャイアントのポスターも貼ってあった。きれいな外観のこのショップは初心者からプロに到るまで、サイクリストの守り神である

メカニックは素晴らしい仕事をしてくれた。この経験からその後、必要なときには相応の修理ショップがみつけられるようになった。旅の半ばでリヤハブの玉押しを取り替え、ブレーキシューはニュージーランドにいる時よりも、頻繁に取り替える必要があった。

自転車を直してくれた自転車のメカニック達は、ほとんどが典型的な、熱心なサイクリスト達だった。とても親切で世話好きで、彼ら自身の自転車旅行について喜んで話しをしてくれた。

その中の一人が「最近はあまり自転車旅行者を見かけない。若者はむしろパソコンの前でじっと座っているんだ」と口にした。

それを聞いて悲しかった。日本は本当に自転車での放浪生活に適した素晴らしい国なのに。

[2. 宗谷岬へ - 北海道の旅] [4. 本州を走り抜く]

last modified:27, 06, 2008